肝臓科
肝臓科は、胃腸、肝臓、すい臓、胆のうなどの臓器を診療する消化器内科に含まれています。肝臓の病気は、自覚症状がほとんどないまま進行していくため、早めに適切な治療を行うためにも、定期的に肝臓検査を行うことが大切です。
肝臓の働き
右上腹部にある肝臓は、1~1.5㎏ほどあり人体の中で最も重い臓器です。食物からの栄養素を体内で利用できるように変換する、エネルギーを蓄える、アルコールや薬剤の解毒、胆汁の分泌、免疫の調整など、人間が生きていくうえで欠かせない働きを担う重要な臓器です。
急性肝炎などの一過性の強い肝障害によって肝臓の働きが悪くなると、皮膚や目の色が黄色くなる黄疸の症状や尿の色が濃くなる、全身がだるい、食欲低下、吐き気などの症状が現れます。慢性肝炎など長期間に渡って続く肝障害が起こると、ほとんど自覚症状は現れません。そのまま進行して肝硬変に進展すると、体のだるさ、食欲低下、むくみ、お腹の張り、黄疸などの症状が現れますが、かなり進行しないとこれらの症状は出ません。
肝臓は、7~8割が失われても1年ほどで元の大きさにもどるほど再生能力の高い臓器です。そのため、肝臓病で負担がかかり続けていても、自覚症状が出にくいため「沈黙の臓器」と呼ばれています。気が付いたときには、かなり病状が悪化していることも少なくありません。
肝臓の病気は、血液検査や超音波検査で調べることができます。定期的に検査を受けることで、病気の早期発見につながります。
当院で行う肝臓検査
当院では、血液検査と画像検査を行っています。血液検査では、肝臓の炎症の程度、肝臓の予備能力、腫瘍マーカーなどの検査を行います。画像検査は、超音波エコー検査で肝細胞がんの検査を行います。
健康診断や人間ドックで、肝機能検査値のALT(GPT)値に異常があった方は、早めにご相談ください。検査で要精密検査や要指導などの結果が出た場合、B型肝炎やC型肝炎などの肝臓疾患が潜んでいる可能性があるので、より詳しく調べる必要があります。当院では、患者様のライフスタイルなどを鑑み、症状に応じて継続できる治療をご提案しています。人間ドックや健診で、「要経過観察」や「要指導」の結果が出た方は、早めに精密検査にお越しください。
肝臓専門医による診察
肝臓専門医は、肝臓に関連する疾患や病気の診断、治療、管理を専門とする医師です。この分野の専門医になるためには、一般的に以下の資格や経験が求められます。
肝臓専門医の優位性
1. 専門的な知識とスキル
肝臓専門医は、肝疾患(例えば、肝炎、肝硬変、肝がん、脂肪肝、自己免疫性肝炎など)の診断と治療において、高度な知識と技術を持っています。
2. 早期発見と予防のアプローチ
肝疾患は早期に発見し、治療を行うことが重要です。専門医は、リスク要因を評価し、早期発見や予防的アプローチを提供できます。
3. 包括的な患者管理
肝臓専門医は、肝臓病に関連する複雑なケースを管理するため、他の専門医とも連携しながら、患者の全体的な健康管理を行います。
4. 患者さんへの説明とサポート
肝臓専門医は、患者さんに対して病気の進行や治療の選択肢について詳細な説明を行い、治療計画を一緒に立てることで、患者さんの自己管理能力を高めることを行います。
肝臓の病気について
肝臓疾患は、重症化するまで自覚症状がなかなか現れないことから「沈黙の臓器」と呼ばれています。
体がだるい、食欲が低下した、体のむくみが気になる、腹水、黄疸などの症状が出るころには、肝臓の機能がかなり低下している場合があります。なるべく早めに適切な検査と治療を行う必要があります。
B型肝炎
B型肝炎は、感染した母親から生まれてくる子供への母体感染、刺青や針刺し事故、性交渉などによって感染します。
感染しても一過性なので自覚症状もほとんどなく、自分でも気が付かないうちに終息することがほとんどですが、まれに症状が重くなる劇症肝炎などを発症することがあるので注意が必要です。3歳までの乳幼児期にB型肝炎に感染すると、その後は慢性肝炎へと移行します。ウイルスを体外に排出することはほぼ不可能ですが、肝硬変や肝臓がんへの進展を抑えて寛解期を長く保つことは可能です。
C型肝炎
C型肝炎ウイルス(HCV)に感染して発症する肝炎です。肝炎の中でも特に慢性化しやすく、感染した人のおよそ7割の方が慢性肝炎を引き起こしています。肝臓がんの原因の第1位であり、早めに治療を行わないと、肝炎から肝硬変、肝臓がんへと進行していきます。
C型肝炎の治療は、インターフェロン療法と飲み薬の併用が主流でしたが、近年では治療薬の進化によって副作用のほとんど出ない飲み薬のみの服用で治療が可能となっています。
インターフェロン療法が受けられない方、ご高齢の方、副作用で治療を中断された方は、ご相談ください。
脂肪肝
脂肪肝とは、脂肪が肝臓の細胞一つ一つに溜まっている状態です。
超音波エコー検査で診断することができます。脂肪肝の主な原因は、お酒の飲み過ぎですが、近年はお酒を飲まない人にも脂肪肝がみられます。これを「非アルコール性脂肪性肝疾患」といい、日本人の男性で4割、女性で2割の方にこの疾患がみられるとの報告があります。
脂肪肝は、そのまま放置していると肝硬変や肝臓がんへと進行する可能性があります。脂肪肝を指摘されたら生活習慣や食生活を改善して、運動療法を取り入れるようにしましょう。
アルコール性肝疾患
長期間にわたる過剰な飲酒が原因で発症します。
適度な飲酒は、アルコール換算量が1日平均20g程度といわれています。過剰な飲酒は、1日のアルコール換算量が60g以上とされています。以下の表を参考に、飲酒量が多い場合は、量を減らすようにしましょう
お酒の種類 | お酒の量 | アルコールの度数 | アルコール換算量 |
---|---|---|---|
ビール中瓶1本 | 500ml | 5% | 20g |
日本酒 | 1合180ml | 15% | 22g |
焼酎 | 1合180ml | 35% | 50g |
ワイン1杯 | 120ml | 12% | 12g |
ウイスキー | ダブル60ml | 43% | 20g |
ブランデー | ダブル60ml | 43% | 20g |
常習的に飲酒している方の9割に脂肪肝がみられ、そのうち10~20%の方がアルコール性肝炎を発症します。さらに重症型アルコール性肝炎の場合は、お酒を断っても1か月以内に亡くなるといわれています。
アルコール・飲酒量のご相談
当院院長の加藤医師は、飲酒量低減薬ナルメフェン(商品名セリンクロ)の処方に必要な研修を修了しており、当院では抗酒薬セリンクロの処方が可能です。 健康上・生活上の問題でアルコールの量を減らしたいとお悩みの方はご相談ください。
※セリンクロはお酒を飲む量を減らす補助のお薬です。
東京都肝臓専門医療機関・肝炎医療費助成制度
B型・C型慢性肝炎の治療には、国が医療費の助成制度を設けています。
認定は、各都道府県が行っており、保健所などで取り扱っています。
東京都では、医療費助成申請に要する診断書を東京都指定の『肝臓専門医療機関』が作成することになっています。
当院は、この『肝臓専門医療機関』として東京都の指定を受けています。
なお、東京都以外にお住まいの方の医療費助成の申請方法は、各自治体の保健所などにお問い合わせください。